中原中也の処女詩集『山羊の歌』の中核部にあたる『白痴群』掲載詩篇を中心に、頻出する〈空〉の表象とその〈空〉の二重構造を考究した。実生活上における長谷川泰子との失愛体験を経て、詩人としての〈個〉に宿る詩魂が、〈すべてを感じる〉という無償の姿勢によってのみ、〈個〉の領域にとどまらない普遍性を獲得できるという、特異な初期の詩観を獲得したことを、詩篇を順に読解することから明らかにした。