全国の改訂・改定された『権利ノート』の形式と内容を明らかにし、その全体像を示した論文である。研究方法は、2014年5月~10月に実施した全国69自治体に対する『権利ノート』の改訂・改定状況に関する質問紙調査、2017年6月に上記の調査で回答を得られなかった自治体を対象への依頼をもとに収集した54自治体100冊の『権利ノート』のテキスト分析を行っている。『権利ノート』の項目の分析から、『権利ノート』が、社会的養護で育つ子ども特有の措置・委託にともなう権利、子どもの不安な気持ちに応答する施設や里親の情報、そして、施設・里親で育つ子どもの権利が網羅的に示されていたことが明らかになった。次に、子どもにとっての親しみやすさへの工夫では、配布対象が拡げられたことが明らかとなった。他にも、半数以上の自治体で子どものメモや記録を残せるページがあり、子ども自身が書き込めるノートにしていく可能性がある。子どもの権利行使のしやすさへの強化においても、7割強の自治体で子どもの担当者を書く欄も設けられていた。社会的養護が大きく変革されるなかで、児童福祉関係者によって作成され、改訂される『権利ノート』も、また良い方向へと変化していることが明らかになった。子どもの権利を伝える大人の意識の変容がみてとれる。