チベット医学は根底に仏教思想があり,その死生観、人間観に基づいた診察,診断がなされる。その姿勢は,医師であってもすべての病む人を好き尽くさんとする如来の誓いを自身の誓いとして診療にあたっている。そのため本稿ではどのように診断・治療するのか,といった方法論ではなく,チベット医学の概要や現状とともに,その背景である『薬師経』に説かれる「十二願」から理念を,さらに東チベット・アムド地方の本山クラスの寺院に併設されているチベット医学の病院と,開業医院の調査からその実際を報告した。そこでは,伝統医療が現在も人々に支持され,入院設備を整え整備された病院として発展していた。これらをふまえて若干の考察を行った.