本書は、西方浄土変研究の枠組みを決定づけてきた当麻曼荼羅研究と松本榮一『燉煌畫の研究』の成果を改めて問い直し、中国唐代の西方浄土変を歴史的・思想史的に把握することを目指す。第一部は、『観経』の十六観という視点から、唐代の西方浄土変の成立と変遷をたどる。第二部では、鎌倉時代初期の作例から絵画と彫刻を一例ずつ取り上げ、来迎思想ではなく観想に通ずる思想を背景として生み出されていたことを考察する。第三部は資料篇として十六観図の描き起こし図を収める。