奈良・当麻寺に伝わる綴織当麻曼荼羅は、日本に伝存する西方浄土変の代表的作例である。本図は八世紀後半の制作とみられ、鎌倉時代以降に大量に転写された当麻曼荼羅の原本でもある。本図の画面下部には、かつて九品来迎図があらわされていたと伝えられる。この九品来迎図の図相は、平安時代後期にはすでに消えかかり、鎌倉初期には判別困難な状態にあったことが『当麻曼荼羅注』や『建久御巡礼記』によって知られ、当初の図様は失われて久しい。一方、当麻曼荼羅の転写本では、下縁部の九品来迎図について、坐像にあらわすタイプと立像にあらわす