本発表は、唐代の西方浄土変を対象に、これまで看過されてきた二つの視点――『観無量寿経』(以下『観経』)と道綽――に着目し、阿弥陀浄土の造形化がいかなる思想的背景のもとに生み出され、またいかなる意味を付与されて発展・流布していったのかについて考察したものである。 西方浄土の場景を可視化するにあたって最重要テキストとして用いられたのは『観経』であったと考えられ、外縁が付加される以前から、唐代西方浄土変は『観経』との密接な関係のもとに成立したものと思われる。 唐代西方浄土変は、道綽浄土教の宗教的要請にこたえ