西方浄土変とは、阿弥陀の西方浄土の場景を造形化したもので、敦煌莫高窟に初唐期以降の大画面の壁画が多数現存するほか、蔵経洞からも絹本画が発見されている。敦煌遺書の中には、こうした西方浄土変の一部や、その外縁の『観無量寿経』所説の図を描いた白描画が数点含まれており、従来は、いずれも壁画の草稿と解されてきた。しかし、それら西方浄土変に関わる白描画をすべて壁画の草稿と見なしてよいものかについては疑問である。そこで本発表では、この問題について考察した。