奈良・当麻寺に伝わる綴織当麻曼荼羅図は、一辺約四メートルという巨大な画面に細緻な綴織によって阿弥陀浄土世界を織りあらわした、きわめて豪奢な西方浄土変である。本図は天平宝字七年(763)に織成されたとの銘文を有していたと伝えられ、国宝指定などでも日本製とされている。しかし発表者がかつて旧稿で論じたように、日本説の根拠は薄く、技法・人的組織や、材料・図様などから見て、本図は唐の宮廷工房の作である可能性が高いと考えられる。そこで本発表では、奈良朝における唐代仏教美術の受容の一事例として、本図の日本伝来をめぐる諸