「九品来迎図」と「九品往生図」とは、しばしば同義とみなされてきた。しかし、両者はきわめて密接かつ不可分に連関する事象でありながら、生起する場ないし空間は決定的に異なっており同義ではない。そこで小論では、まず敦煌莫高窟の現存作例(第431窟、第215窟、第171窟)を対象に、唐代九品来迎図の基本的要素や特徴を洗い出し、「来迎」と「往生」の違いを明らかする。