敦煌写本の『大雲経疏(大雲経神皇授記義疏)』は、武周革命に利用された仏教的符讖である。したがって同疏は、則天武后やその取り巻きが何を重視し、それにどのような意味づけをしていたかを知るうえで、またとない好個の材料といえる。興味ぶかいことに、同疏には本来は仏教と関係のない明堂や封禅に関する記述が含まれている。そこで本稿では、これらの問題について考察を加え、同疏に明堂や封禅の記述を含むのは、これらがいずれも受命の君たることを象徴し、その王権の正統性を裏付ける重大事であったからであること、さらに則天武后は即位後に、明堂の運用や封禅の実施において、仏教的要素を持ち込んだことを指摘する。