本論文は、従来の西方浄土変研究の基礎となってきた松本榮一『燉煌畫の研究』の西方浄土変に関する説を根本的に問い直したもの。松本氏は西方浄土変を本来『観無量寿経』(以下『観経』)とは無関係に成立した変相図であるとみなしていたが、十六観に特有のモティーフに注目することにより、従来『観経』とは無関係だとみられてきた西方浄土変の中に『観経』に由来する図像が描かれていることを明らかにし、さらには『観経』こそが西方浄土変の制作における最重要テキストであったことを論じる。