聖語蔵本『宝雨経』は、光明皇后の発願になる「五月一日経」の一部として書写されたものであるが、巻九のみは東京国立博物館に所蔵されており、これまで全貌が明らかでなかった。そこで小論では、この東博本巻九の則天文字の使用状況を確認し、ついで五月一日経『宝雨経』の書写状況について正倉院文書をもとに考察を加え、旧稿の不備を補うとともに一部誤りを正し、『宝雨経』の訳場列位の校訂を行った。