唐代に西方浄土変が前代から大きく変貌した背景を探り、道綽の果たした役割に光を当てる。『観経』受容の高揚期と西方浄土変制作の盛期とは、いずれも隋から初唐にかけての時期にあたっており、そのころに登場する新種の西方浄土変が、大画面で描写が複雑になり、一種の透視図法を用いた奥行き表現になるという特徴をもつことを着目する。さらに道綽の『安楽集』や道宣の『続高僧伝』道綽伝の記述から、そうした新種の西方浄土変が生み出される背景として道綽の浄土信仰を想定する。