本論文は、当麻曼荼羅に対する従来の図様解釈を再検討し、唐代の西方浄土変として捉えなおすことを目指したもの。まず証空以来の図様解釈を整理・検討し、中台部分を善導の『法事讃』『般舟讃』の記述にもとづくとみるのは行過ぎた解釈であることを指摘する。また当麻曼荼羅の制作地については、太田英蔵氏が指摘した唐の宮廷あるいは政府直属の工房による制作の可能性を支持し、技術的に逸品であるだけでなく、内容的にも極めて正確な、唐代西方浄土変の真面目を現在に伝える優品であると結論づける。