本論文では、敦煌莫高窟の西方浄土変の外縁部に描かれた十六観図を論じる。まず、松本榮一氏以来の十六観図に関する研究成果を振り返り、問題点を明らかにする。つぎに、敦煌の十六観図を『観経』の記述との対応関係を軸に五種に分類する。さらに、分類結果に画面形式の違いを考慮に加え、敦煌十六観図の変遷をたどり、従来、西方浄土変の外縁に描かれる形式の十六観図として現存最古とされてきた第二一七窟の作例について、その位置づけを再検討する。