十六観図は典拠が明確で、計16場面からなる各観の配列順や図像的特徴も、経典に規定されている。しかしながら、敦煌に現存する十六観図の多くは経典と合致しない。本稿は、いまだ専論がなく全体像が明らかでない中唐吐蕃期(786-848)の敦煌十六観図について、実地調査にもとづき分類と整理を行い、その特徴や変化を追うとともに、吐蕃支配下における敦煌の造像活動の一端を考察する。