敦煌蔵経洞から発見された白描画については、従来一般に壁画の下絵と解されてきた。しかし、小論では、西方浄土変に関する白描画のうち、文書を伴い制作年代の手掛かりを有する外緣部分の二点(Stein painting 76、P.2671V)を対象に、内容と制作年代を概観し、そのうえで現存する敦煌莫高窟や楡林窟の壁画および蔵経洞発見の絹本画との比較を行い、壁画制作と粉本という観点から、これらは画工組織における習作の一つとみられることを指摘する。