鎌倉時代の東大寺再興を担った俊乗房重源上人の肖像彫刻について、重源の宗教的系譜と入宋に関する議論を紹介したうえで、重源上人像をめぐる研究の成果と問題点を整理する。作者については手がかりがなく、快慶説と運慶説が並存し解決をみていない。また制作時期については『元亨釈書』のわずかな記載しかなく、重源が没した建永元年頃とみる点では見解が一致しているものの、生前に制作された寿像かどうかという問題が残されている。