OECDのPISA調査や令和3年度の全国学力学習状況調査では,児童生徒が勉強のためにICT機器を使った時間が長くなるほど成績が低下する結果を示している。この原因は不明であるが,容易にネット検索により情報が得られるようになった弊害として,ネット検索した情報を覚えよう,あるいは理解しようとしていないことが考えられる。この傾向を確認するため,大学生に対してネット検索して解答することも可とした問題を解かせる実証実験を行った。その結果,問題種にも依存するが,「思考力が必要な問題」「既有知識が少ない問題」「文章で解答する問題」などは,検索して一度正解を得たとしても,それを覚えていない,あるいは理解していない割合が40%以上に至ることがわかった。この結果が,ICT機器の勉強のための使用時間が長いほど学力が低下する原因であることは確認できないが,GIGAスクールが進む今,便利さがもたらす「落とし穴に落ちていることに気づかない意識」に対する指導が必要であろう。