大学生を対象とした質問紙調査法において,1.一般的な質問と具体対な事例に対する質問への回答の違い,2.質問の回答選択法の違いにおける回答の違い,3.被験者の回答意識がもたらす回答の違い,といった回答の違いをもたらすバイアスの存在を,実際の質問紙調査法で得たデータを分析することにより明らかにした。具体的には以下のバイアスを明確にした。自己評価を一般的な項目に対して行う場合と具体的な事例に対して行う場合では,回答が異なる可能性がある。相対する特性や姿勢・態度を調査する場合,それらが共存する可能性が高い項目においては調査結果が回答の選択法によって変わる場合がある。また,自分自身に関することを尋ねられた場合,自分自身をよく見せたいという虚栄心バイアスが存在する。この虚栄心バイアスがあることによって,被験者に自身の考え方や態度,姿勢に関して尋ねる場合には,回答値が実態以上に正方向に高くなる可能性がある。これらのバイアスは感覚的にはその存在が想定されるが,本研究はデータを基にその存在を検証し,質問紙法を実践するときのバイアスとして明確にしたものであり,調査を行う際に留意すべきものとして提示した。