我が国では高齢者の約69%が外来通院をしている,といった政府の調査結果が報告されている.それにもかかわらず,こうした外来通院中の高齢者の運動機能等を調査した報告は見当たらなかった.そこで本研究では,明らかな運動機能低下が見られる者を除いた外来通院中の高齢者70名について,運動機能等を評価するとともに,結果を先行研究と比較することで彼らの現況を推察した.評価項目は握力,膝伸展筋力,最大歩行速度,Functional reach,Timed "up and go" test,Physiological cost index,長座体前屈,活動量(歩数)であった.その結果,対象者のほぼ全項目の平均値もしくは中央値が,健常高齢者の平均値と二次予防事業対象者の平均値や各種カットオフ値との間に位置していた.また個別に見ると,多くの項目で30~50%の対象者が二次予防事業対象者の平均値や各種カットオフ値を下回っており,全項目でこれらを上回った対象者は11名(16%)のみであった.このように,運動機能の低下が明らかではない外来通院中の高齢者の中には,何らかの運動介入が必要と思われる者が多数存在することが示唆された.