京都府内の理学療法士に対して,認知症への対応の現状に関するアンケートを実施した.全担当症例のなかで認知症合併例の占める割合は約40%であった.また理学療法場面で認知症の症状に難渋している理学療法士は多く,転帰にも影響を及ぼしていることが判明した.このことは,積極的に認知症への関わり方を検討していく必要性があることを示している.
周辺症状(BPSD)への対策で苦慮している理学療法士が多く,特に,アパシーや易怒性は出現頻度が高く転帰にも関連していることから,その対策は重要である.周辺症状(BPSD)への対応には臨床経験の影響もあり,研鑽によって対応能力が向上する可能性を示している.
対応に難渋している理学療法場面には,中核症状が優位なものもあるが,中核症状だけでなく周辺症状が複雑に影響しているものがある.影響している周辺症状としては,感情障害が多かった.理学療法士には,基盤にある中核症状だけでなく,周辺症状(BPSD)に反映された心理的な反応など,対応に難渋している理学療法場面の背景を洞察していくことが求められる.