かつてアメリカ政治学の主潮流を成していた多元主義は、社会集団間の圧力交差が政治的安定を実現するとしていた。しかし、現実の社会集団間には著しい非対称性があることを多元主義は見落としていた。この点への批判から多元主義はむしろ批判の対象となっていく。代表的な多元主義者と見なされていたダールが後に多元主義の批判に転じる過程は、多元主義のたどった軌跡を象徴しているものといえる。(4ページ)