マルチメディアの発達や代議制の機能不全に対する批判から、直接民主政を求める声が強くなっている。しかし直接民主政が正当化されるのは市民が直接決定に参加することだけではなく、事前に十分に審議=「熟慮(deliberation)」が行われることにもあることをダールは指摘する。このような「熟慮」の過程を欠いたままの直接民主政化は決して民主政にとって望ましいことではなく、彼はこれを「エセ民主化」と呼び批判する。(16ページ)