本稿では幼稚園教育要領と保育所保育指針における子どもの「主体」に関する相違について比較分析を行うことを目的とする。これまでの先行研究においても、幼保教育間における「主体」の違いが検討されてきた。本稿では、「主体」「主体性」「主体的行動」をキーワードにして文書から抽出を行い、それぞれのねらい、行動内容、目的について考察する。
考察の結果、幼稚園では、他者との関係性を重視しながら協調性を構築するという「他者目線への配慮」が求められているのに対して、保育園ではまずは子ども一人一人の気持ちや意見を受け止めて子ども同士の関係性を築いていくという「自己目線の尊重」が重視されていることを明らかにしている。「他者目線への配慮」によって、集団生活の中で他者との関わりを学び、協同しながらも自発的に行動できるようになることが目指されている。「自己目線の尊重」を重視する保育園教育では、まずは自分の気持ちが保育士等によって受け止められることで自信や安心感につながり自己肯定感の養成につなげることが目指されている。